GO GBコラム

事前キャンプを知ろう

事前キャンプ予定施設・富士通スタジアム川崎支配人 田中育郎さん「パラスポーツ先進国・英国代表チームを支えられることが大きな喜びです」

英国パラリンピック代表チームの事前キャンプ予定施設となっている、富士通スタジアム川崎。かつては大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)やロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)のホームスタジアム「川崎球場」として親しまれていましたが、現在はアメリカンフットボールを中心にラクロス、サッカー、障がい者スポーツ等、様々なスポーツの大会や体験会の開催を通じて市民にスポーツを「観る」「体験する」機会を提供する場所としての役割を担っています。今回は富士通スタジアム川崎の支配人・株式会社川崎フロンターレの田中育郎さんに、施設の歴史や、これまで取り組んできたパラスポーツの啓蒙活動、さらにはパラアスリートを応援する想いなどを、語ってもらいました。

60年以上に渡る歴史を、未来に伝えることの大切さ

川崎生まれ、川崎育ちで、幼少の頃からよく川崎球場に通っていたという田中さん。

田中さん
「父親と一緒に大洋ホエールズの試合観戦に来ていました。巨人戦では、王貞治さんのホームランを実際に見て、その打球の速さに興奮したことを覚えています」

1951年の開場以来、川崎球場は高橋ユニオンズ、大洋ホエールズ、ロッテオリオンズと3球団のフランチャイズとして、数多くの名勝負の場になってきました。王選手の700号ホームランや張本勲選手の3000本安打は川崎球場で放たれ、プロ野球ファンには伝説の試合として語り継がれている「10.19 ロッテ対近鉄」も、ここがその舞台となりました。
田中さんは、2014年に所属する川崎フロンターレが富士通スタジアム川崎の指定管理者として名乗りを上げた際、川崎球場から続くスタジアムの歴史を紹介するスペースの設置を、提案書の中に盛り込んだといいます。

田中さん
「60年以上、多くのスポーツファンや川崎市民に愛されてきた場所であること、そしてそこにたくさんの選手たちの歴史が刻まれていることを大切にし、未来に伝えていくことで、スタジアムとしての価値が上がります。ここでプレーをする選手たちにとっても、その重みを知ってからフィールドに立つことで、特別な想いを持ってもらえると思うんですよね」

現在、富士通スタジアム川崎のオフィスには、貴重なユニフォームやサインボール、古い雑誌など、川崎球場時代の歴史を伝えるギャラリーがあり、多くのスポーツファンが訪れています。また田中さんは、照明灯や外野フェンスなど、今でも一部が残る川崎球場時代の施設見学や当時を振り返るイベントなどを定期的に企画。昔を知るファンはもちろん、若い人たちの間でも話題となっています。

「40代以上の人に『川崎で知っている場所といえば?』と聞いたら、おそらく川崎球場はトップ3に入るのではないでしょうか。それほど川崎市のシティプロモーションとしても重要な施設ですし、富士通スタジアム川崎が川崎球場だったという歴史を知ってもらうことは意味のあることだと思います」
と田中さんは熱く語ります。

現在は、単なるサッカー場、アメフト場といったスポーツ観戦の場という側面ばかりでなく、例えば市民向けクリニックやエクササイズ教室なども展開し、スポーツを通じた「市民のための、市民が集う場所」「地域コミュニティのハブ機能を持ったスタジアム」という方針で運営されている富士通スタジアム川崎。その歴史にも興味をもってもらうことで、ここが川崎市民にとってさらに思い入れのある場所として浸透していくことでしょう。

スポーツ施設として、パラスポーツの発展に貢献できること

平日のアップフィールドからは、サッカーボールを楽しげに追いかける子供達の声が聞こえてきます。彼らは川崎市の障がい者支援NPOエスペランサが開催する障がい児サッカー教室に通う生徒たちです。

田中さん
「エスペランサとは我々が指定管理者となる前から交流があり、常々練習場所の確保が難しいという話を聞いていました。しかし千葉県や埼玉県などからも参加者があるということで、平日に教室を開催しても需要があるはずと思い『一緒にやりましょう』と誘ったんです。現在は毎週4回、アップフィールドを使って練習していますが、どの時間帯も満員で、順番待ち状態という人気ぶりです」

さらに富士通スタジアム川崎ではこれまで、アンプティサッカー(切断障がい者サッカー)、ブラインドサッカー(視覚障がい者サッカー)、ソーシャルフットボール(精神障がい者サッカー)、デフサッカー(聴覚障がい者サッカー)といった競技のイベントを開催。パラスポーツへの理解や普及に貢献してきました。施設としてパラスポーツを支える意義について、田中さんはこう語ります。

「パラスポーツで富士通スタジアム川崎が注目されることで、川崎市がパラスポーツ振興に積極的に取り組む地域であるということを発信できることは大きいと思います。パラスポーツに活動場所を提供するというスタンスではなく、多くのサポーターがいる川崎フロンターレというプロスポーツチームが管理をしているというメリットを活かして、その認知や普及にも貢献していきたいと考えています」

パラリンピックをきっかけに、たくさんの人に、パラスポーツの魅力を体感してほしい

事前キャンプ施設として、英国パラリンピック代表チームへのサポートを行うことが予定されている富士通スタジアム川崎。田中さんは、その意義はスタジアム、川崎市、そして日本のパラスポーツの発展において非常に大きいと考えています。

田中さん
「パラスポーツの歴史が深く、パラスポーツの先進国であるイギリスチームをサポートできるというのは非常に有意義。この経験から、施設として、地域として、たくさんのノウハウを得ることができると思います」

パラスポーツへの熱い情熱を持ち、2020年に英国パラリンピック代表チームをサポートする機会を心待ちする田中さんに、パラスポーツの魅力を次のように語っています・

「自分の持てる力を最大限に発揮して相手に向かっていく姿勢や、驚きの身体能力を持ったアスリート同士の真剣勝負を見るという楽しさは、健常者の競技となんら変わりません。それに加えて、例えば腕の力だけで全身を支え、片足だけでびっくりするような打点でシュートを放つアンプティサッカーのプレーを見たとき、私自身、パラスポーツならではの醍醐味があるということを知りました。事前キャンプを通じて、多くの人が世界レベルのパラリンピアンたちのプレーを見てくれたらいいですね」

GOGBコラム編集部より

2020年8月13日〜8月26日にパラリンピック5人制サッカー(ブラインドサッカー)などの英国代表チーム事前キャンプが予定されている富士通スタジアム川崎。川崎のスポーツの歴史がたくさん詰まったこの場所には、日常的にパラスポーツを支える姿がありました。トップランクのパラリンピアンたちの勇姿を見に、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

(英国パラリンピック委員会(BPA)は、東京大会に向けた英国パラリンピック代表チームの準備計画を確定し、川崎市では等々力陸上競技場を陸上競技の事前キャンプ施設として使用することを2019年9月に決定しました。これにより富士通スタジアム川崎については事前キャンプ施設として使用しないこととなりました。)